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MaHollo

彼女と瞳の中で旅をした。

それは、一瞬の出来事だったけれど、確実なものだった。食べ物(タコス)を「たべる?」って分けようとした瞬間だった。

ヴィジョンとでも呼ぶべきか。一瞬にしてそこに閉じ込められていた記憶と空間が飛び出してきた。音と映像と、下手をすれば香りや空気感や風までもリアルに感じることができるほどだった。

他の誰にも観ることのできない、ふたりだけの光景がそこにはあった。考える間もなく出てきた言葉が『会えたね、久しぶりやね』というひとことだった。その言葉を聞いた瞬間、お互いに涙が止まらなくなった。とても不思議な体験だけれど、喜びと嬉しさがそこにはあった。そして、それと同時にこのセカイに30歳という年齢差を持って産まれてきたことを悲しんだ。それも、時間にすればほんの数分間のことだったろうけれど、ふたりにとっては長い時間のように感じた。

彼女は驚いたような瞳をしていた。涙が溢れて止まらないのはボクも同じ。

そこにあったタコスをふたりで分けてその場は終わりにした。

最近、空間の中に記憶や情報が格納されていることに気付くことが増えた。こんなことを聞いた人の99%はおそらくぶっ飛んだ話に聞こえるだろうし、信じがたい話だと思う。しかし、ボクは実際にその体験をしている。場所や空間に記憶が格納されている。

例えば、車の中で話していた話題があったとする。目的地に到着して車を降りると、そんな話をしていたことすら忘れて目の前のことに集中する。そして、用事が済んで車へ戻ってくると、さっきの話をまるでタイムラグなんてなかったかのように続けることができる。分かりやすく言うとそれこそがまさに「空間に格納された記憶」なわけだ。

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